長崎の人気観光地である国宝・大浦天主堂は、世界遺産にも認定された歴史ある教会です。
しかし、ただ世界遺産というだけで観光してしまうと、自由が当たり前になった今の世の中ではその歴史的背景にある大切なものを見逃してしまいます。
この記事では大浦天主堂の歴史を紐解き、外観のみでなく潜伏キリシタンの苦悩やじっくり見学したい見どころをまとめてありますので、参考にしていただければと思います。
例によって、アクセス、駐車場情報、観光案内など撮って来た写真でシェアします。
皆さまの旅に少しでもお役に立てれば幸いです。
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大浦天主堂とは?
時は幕末19世紀、日本の開国に伴って函館・横浜・長崎に外国人居留地が開かれました。
大浦天主堂は、1864年にフランス人宣教師(プティジャン神父)によって建てられたカトリック教会で、現存するキリスト教建築物としては日本最古のものになります。
設計段階から正式名称は「日本二十六聖殉教者天主堂」とすることは決まっており、本来なら「二十六聖人」が殉教した西坂(現西坂公園)に建てる予定でした。
しかし、居留地外の建設は認められす現在の南山手に外国人(主にフランス人)のための教会として建てられたのです。大浦天主堂は殉教の地である西坂に向けて建てられています。
竣工時は禁教令が残っており大浦天主堂は外国人専用ではあったが、プティジャン神父は日本人キリシタンの発見を期待して正面に「天主堂」の大きな文字を掲げたといいます。
※日本二十六聖人(にほんにじゅうろくせいじん)は、1597年2月5日(慶長元年12月19日)豊臣秀吉の命令によって長崎で「はりつけの刑」に処された26人のカトリック信者。
※大浦天主堂は「二十六聖人」に捧げられた教会であり、外国人の為に建てられた教会でもある。
出典元:大浦天主堂パンフレット
1865年、浦上の潜伏キリシタンが大浦天主堂を訪ね、プティジャン神父に密かに信仰者であることを名乗った出来事は「信徒発見」と呼ばれ世界を驚嘆させ教皇を喜ばせました。
1933年(昭和8年)、建築様式は3本の塔を持つゴシック風の構造で、輸入建築の代表的な建築物として国宝指定。
1945年(昭和20年)8月9日 、長崎市への原爆投下によって損傷しましたが、爆心地から比較的離れていたため倒壊・焼失は免れた。
1953年3月31日、原爆による損傷の修復・増築が行われ現在の外観に改築し国宝に再指定。
2018年7月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つとして世界文化遺産に登録。
潜伏キリシタン・隠れキリシタンの違いは?
出典元:大浦天主堂パンフレット
「潜伏キリシタン」とは、禁教期の17~19世紀の日本において普通に生活しながら密かにキリスト教の信仰を続けていた人々のことです。
今の教科書は知りませんが、それって私は「隠れキリシタン」って習ったような記憶が・・・という人も多いはず。
確かに昔は隠れキリシタンを発見するために踏み絵を行ったと習いましたから、潜伏キリシタンは馴染みがありません。
潜伏キリシタン・隠れキリシタンは同じ時期を指す信徒のことで間違いないのですが、現在では明治時代以降に禁教が解かれても隠れるように江戸時代の信仰をそのまま守り続けたと人を「かくれキリシタン」「カクレキリシタン」と呼ぶようになっています。
隠れる必要もなくなったのに隠れとはおかしいので、あえて「かくれ」「カクレ」と学者は使うようです。
少しわかりにくいのでまとめると、現在は隠れキリシタンの中でもキリスト教は認められる以前が「潜伏キリシタン」でそれ以降が「かくれキリシタン」「カクレキリシタン」と世界遺産認定にあたり呼び方を区別されるようになったのです。
ただし一般的な英訳は「Hidden Christians」と同じで区別はされていません。
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連資産
出典元:大浦天主堂パンフレット
上記12の関連資産はキリスト教禁止により宣教師不在の中、普段の生活を続けながら信仰を続けた潜伏キリシタンの伝統の証となる遺産群です。
大浦天主堂の信徒発見から、明治以降の潜伏が終わりを迎えるまでの歴史を物語るものです。
船でしか行けない所もあるのですべて回るのは普通の観光では難しいと思いますが、興味のある人は大浦天主堂から訪れてみてはいかがでしょうか。
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大浦天主堂の観光情報
大浦天主堂・キリシタン博物館
443 824 620*34 | |
住所 | 〒850-0931 長崎市南山手町5-3 |
📞 | 095-823-2628 |
拝観時間 | 通常 AM8:00 ~ PM6:00(拝観受付・最終入場は PM5:30まで)冬季 2020年12月1日(火)~2021年3月31日(水) AM8:30 ~ PM5:30(拝観受付・最終入場は PM5:00まで) |
拝観料 | 大人 1000円 中高生 400円 小学生 300円※ 拝観料には「キリシタン博物館」の入場料を含みます |
休館日 | 教会行事により休館する場合があります |
拝観所要時間 | 30~60分(大浦天主堂・キリシタン博物館) |
バリアフリー | 国宝・重要文化財のため対策は行われておりません |
その他 | 館内は撮影禁止
飲食・喫煙の禁止 静かに拝観して下さい(携帯はマナーモードに) 帽子は脱帽・露出の多い服装はお控え下さい ペットの同伴禁止(介助犬は除く) |
公式HP:大浦天主堂のサイトはこちら
※教会行事の際には拝観できない場合がありますことをご了承ください
※大浦天主堂及び博物館では、職員のマスク着用、手指の消毒、検温を実施しております
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大浦天主堂のアクセス
長崎と言ったら路面電車ですよね。
長崎に来た~って雰囲気が味わえますので一度は乗ってみると良いかも。
ほとんどの観光地は路面電車で行けると言っても過言ではありませんし、バス路線より迷わなくていので利便性が良いです。
唯一夜景で有名な稲佐山へは行けませんので、ロープウェイ乗り場まではバスですね。
車で走行時の注意点
路面電車と車は同じ道路を走るので注意点があります。
信号機の矢印信号ですが、車は通常⇒緑の矢印で進みますが、信号待ちをしていると⇒オレンジの矢印が出ることがあります。
⇒オレンジの矢印は路面電車の信号なので車は進んではいけません。
また、右折で待機するときも路面電車の線路上で待機せずに線路の手前で待機します。
ながさき出島道路 新地ICより
高速を降りてすぐですのであらかじめ駐車場をリサーチしておくと慌てずに済みます。
距離:所要時間=1.6km:約5分
※実際は大浦天主堂までは車で行けませんので付近の駐車場までです。
福岡空港から
距離:所要時間=152km:2時間1分
- 高速道路:金の隈(福岡都市高速2号太宰府線) ⇒ 新地(ながさき出島道路)
- 通常料金:4,340円
- ETC料金:3,190円(休日最大30%割引)
福岡空港から長崎まで車で移動した現地レポを下記記事にまとめてありますので参考にして下さい。
関連記事 「福岡空港から長崎までレンタカー 所要時間・高速料金・SA/PA情報を現地レポ」
JR長崎駅から
市電 | 市電1番「崇福寺」行(約10分) →「新地中華街」乗換 5番「石橋」行(約10分) →「大浦天主堂」下車後徒歩5分運賃:130円 |
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長崎バス | 「長崎駅前東口」(約12分) →「大浦天主堂下」下車後徒歩5分運賃:160円 |
徒歩 | 約35分 |
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大浦天主堂の駐車場情報
拝観専用駐車場はありませんので、付近の公営・民間駐車場を利用します。
お得で安い駐車場を下記記事で紹介していますので参考にして下さい。
関連記事 「大浦天主堂・グラバー園周辺駐車場10選 軍艦島上陸クルーズ利用者も必見!」
※情報(駐車時間・料金)が変更されている場合もありますので、ご利用の際は必ず現地の表記をご確認ください。
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大浦天主堂の歩き方
グラバー通りは180mの坂道
記事で紹介してあるように大浦天主堂には駐車場はありません。もちろん車両も昼間は進入禁止です。
公営・民間駐車場のほとんどがこのグラバー坂の下にあり、路面電車の駅やバス停も坂の下にあるのでほとんどの観光客がグラバー坂を通って大浦天主堂へ向かうメインストリートです。
チーズカステラ・角煮まんじゅう・南山手プリンと食べ歩きたいところですが、グラバー坂は180mしかありませんので食べてる間に到着しちゃうのがちょっと残念。
なお、大浦天主堂内は飲食禁止ですので帰りのお楽しみにとっておきましょう。
坂の上には大浦天主堂と隣接して世界遺産「グラバー邸」があるグラバー園があるので多くの観光客がセットで観光します。
軒を連ねる両側の店に目星を付けながら登って行くと、帰りのお土産購入がはかどります。
階段下までは無料ですが、左側で拝観券を購入して「世界遺産大浦天主堂」に入っていきます。
コロナ下という事もあってか日曜の午前中は空いてました。
信徒発見のレリーフを見逃すな
階段を登っていくと半ばにある1965年に信徒発見百周年を記念して建立された大きなレリーフに目が行きます。
信徒発見とは?
1865年、浦上の住民十数名の男女が建立まもない大浦天主堂を訪ね、一人の女性がプティジャン神父に近づき「私達もあなた様と同じ心の者でございます、サンタ・マリア様の御像はどこ?」と約250年にわたる厳しい迫害を耐え忍び、カトリックの信仰代々守り伝えた潜伏キリシタンである事実を話したのです。
この信仰宣言のニュースは史上例のない事実として全世界を驚嘆させ、当時の教皇は感激してこれを「東洋の奇蹟」と呼んだそうです。
レリーフの横にある潜伏キリシタンが告白したプティジャン神父の碑。
その隣のヨハネ・パウロ二世(ローマ教皇)の碑は1981年の大浦天主堂ご訪問を記念して建立。
大浦天主堂の歴史を見届ける2体のマリア像
大浦天主堂には2体のマリア像があります。
1体は天主堂正面にある白い像で、下の台座に書かれているように「日本之聖母」像と呼ばれるもの。
これは信徒発見の翌年、プティジャン神父が信徒発見の記念としてフランスに発注したものです。
明治維新の2年前の事とは思えないくらいに綺麗で美しく保たれているのに驚きました。
マリア像は大浦天主堂門前に設置されたものの明治になってもキリスト教の弾圧は続き、「浦上四番崩れ」と言われる大迫害、そして原爆によ大被災を見届ける事となります。
聖母マリア様が見ている長崎の風景を御覧ください
正面のレンガ造りの建物は、国宝の世界遺産の大浦天主堂に代わってミサが行われる「カトリック大浦教会」です。
出典元:大浦天主堂パンフレット
そしてもう1体のマリア像は、聖堂内で信徒発見を見守っていました。
潜伏キリシタンの1人の婦人が胸に手を当てプティジャン神父に云いました。
「私共は、全部あなた様と同じ心でございます」
「サンタ、マリアの御像はどこ?」
神父が聖母マリア像に案内すると、喜びびあまりこう言ったそうです。
「本当にサンタ・マリア様だ、御子イエズス様を抱いていらっしゃる」
このマリア像は聖堂内正面大祭壇右側の小祭壇に飾られていますが、この事を知らずに見るのと知ってみるのとでは大きな違いがあります。
大浦天主堂は小さな教会ですが、時間をかけてじっくり見てほしいですね。
大浦天主堂の魅力はいっぱいある
白亜という言葉が似合う大浦天主堂の魅力はその美しさという人もいるでしょう。
しかし、正面のマリア像・聖堂のマリア像はもちろんのこと、美しい教会に秘められた悲しい過去・悲しい歴史があることを決して忘れてはいけません。
壁に天主堂の文字が見えますが、近年は天主堂と言わず普通に教会と言います。
出典元:大浦天主堂パンフレット
教会には付き物のステンドグラスはもちろん目をみはる物がありますが、原爆の爆風により吹き飛んでいますので戦後に改修されたものです。
中には入れませんが告解(懺悔)室もありますよ。
観光地でなければ、神社・仏閣には行っても、教会にはなかなか行く機会がない人も多いと思いますし、はなはなもクリスチャンではありませんので、十字架にかけられたキリストをじっくり見る機会がありません。
現在の私達は自由が当たり前になった世の中を生きていますが、真の自由の意味とありがたさを考えてみるいい機会になると思います。
ここを訪れる機会に恵まれたなら、そんな事を思いながら祈りを捧げてみてはいかがでしょうか?
※教会堂は「祈りの場」ですので、見学マナーを守り、厳粛な雰囲気の中で心静かにお過ごしください。
※写真・動画撮影は禁止されています。
聖堂内を見学したら横から後方に向かって順路があります。
大浦天主堂はゴシック様式という高い塔と内部を明るくしてステンドグラスをはめ込み、心を神様に向けさせる建築様式。
教会の鐘は塔内に置かれて外から見えたりしますが、大浦天主堂はここにはありません。
天主堂後方の階段を登ったところに2階建ての鐘楼がありますが、残念ながら進入禁止になっていますので中を見ることはできません。
創建以来昼12時と夜6時にはずっと鳴らされているそうですが、現在は自動で鳴るようになっています。
どんな音が鳴るのでしょうか?時間が合えば聞いてみたいですね。
大浦天主堂キリシタン博物館はじっくり見学したい
国指定重要文化財「旧羅典神学校」を博物館に改装してあります。
写真撮影禁止なのでお見せできませんが、踏み絵の銅板なども置かれており見るもの全てが興味深かったです。
三階建の館内はじっくり見たらきりがないほど資料がいっぱいでとても勉強になります。
「旧長崎大司教館」も博物館に使われ、別館といった感じですが、こちらはベランダからの景色も見逃せません。
2館ともボリュームたっぶりなのでじっくり見るなら大浦天主堂全体で1時間は見ておきましょう。
「オラショ」とは祈りのこと
キリシタンは祈りのことを「オラショ」と呼びます。
「潜伏キリシタン」は、少人数で集まり「オラショ」を唱えて祈りを続け、観音像を聖母マリアに見立てたり、メダイ(コインのような平らなもの)、ロザリオ(十字架の付いた数珠)、クルス(十字架)などの聖具を隠し持っていました。
キリスト教伝来当時に授かった方法で生まれた子に洗礼を授けるなどして信仰を守りつづけたそうです。
拝観券売り場の反対側にあるので帰りに時間があれば立ち寄ってみましょう。
もちろんアクセサリーとして購入する人もいれば、クリスチャンでお祈り用に神父さんに祝別してもらう人もいらっしゃいます。
カトリック大浦教会ではミサが行われる
グラバー坂を登ったところにあるカトリック大浦教会。
国宝の大浦天主堂の聖堂には多くの観光客が訪れ祈りの場としての時間が取れなくなったため、1975年(昭和50年)に建設されました。
赤レンガの外観に正面にはマリア像があり、毎月のミサはここで行われています。
色とりどりのステンドグラスの明かりで照らされた厳かな雰囲気は、大浦天主堂とは異なった趣がありますので時間があれば覗いてみてはいかがでしょうか?
大浦天主堂の夜間ライトアップは必見
長崎の夜は定番の稲佐山で夜景を見る予定の人も多いと思います。
グラバー園内が夜間ライトアップされている期間は、ここから夜景を楽しんでもいいでしょう。
もちろん帰りに大浦天主堂に来てみるとライトアップされてきれいでしたよ。
中には入れませんが日没から22:00頃までライトアップ。
昼間は気付きませんでしたが、国宝と世界遺産のしるしが入口右側にあります。
グラバー坂に隣接しており、大浦天主堂・グラバー園に最も近い便利なホテルなので1泊させていただきました。
翌日はここから1番近い軍艦島コンシェルジュさんで上陸ツアーに参加してきましたよ。
大浦天主堂のご案内はいかがでしたでしょうか?
文化庁発表の宗教年鑑(令和元年版)によるとクリスチャンの多い都道府県ランキングは
- 1位 東京都 86万9443人
- 2位 神奈川県 30万3530人
- 3位 大阪府 7万3654人
- 4位 長崎県 6万4174人
- 5位 兵庫県 5万9007人
大都市に混じって長崎県がランクインしてるのがわかりますが、カトリックの人口比率は長崎が最も多く県民の約5%だそうです。
さすが出島の長崎というか、街を歩いてても異国情緒たっぷりのいい街でした。
最後になりますが、現地に行って気になった事をまとめてみました。
まとめ
- 大浦天主堂は世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連資産」の一つ
- 大浦天主堂は現存するキリスト教建築物では日本最古
- 大浦天主堂は国宝で世界文化遺産
- 大浦天主堂では信徒発見という歴史的出来事が起こった場所
- これを見ずして何を見る聖堂内のマリア像は必ず見ておこう
- 潜伏キリシタンと隠れキリシタンは同じだが現在は潜伏キリシタンと言うのが一般的
- 大浦天主堂キリシタン博物館は見どころ多い。観光時間は1時間は欲しい
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